小川 耀一朗‎ > ‎

39年度人工知能学会全国大会 聴講まとめ

日程:2019年6月4日(火)〜6月7日(金)
場所:朱鷺メッセ

自分は6月4日(火)のみ聴講した.
ヒューマンインターフェイス・教育支援のセッションに参加し,興味深かった発表をまとめる.


学習者の学習データから,学習者の理解度や知識の習得状態を推定する手法に,Bayesian Knowledge Tracing (BKT) がある.これは学習者が知識を理解しているかいないかを二値で判断し,知識への理解度を確率値で表すモデルである.
提案手法では,遷移確率パラメータを学習者全体共通ではなく個別化し,課題ごとの特性も反映させたBKTの拡張モデル,また,知識状態を離散値ではなく連続値として表現するために隠れマルコフIRT(HM-IRT)をBKTの一種とみなしたモデルの2つを提案した.

eラーニングシステムSamuraiの履歴データから,プログラミング学習者の習得度の推定精度を求める実験を行ったところ,HM-IRTの推定精度が最も高かった.

問題に対して理解度を事前に設定する必要はなく,モデルが学習者の理解度を連続値で推定してくれるため,教師が理解度を考慮してサポートすることが可能になる.
Webテスト(eテスティング)の運用では,各テストの実施前に受験者あるいはテスト項目の一部を共通するようにテストを設定する必要があり(リンゲージ),eテスティング導入の妨げとなっている.
リンゲージを行っていない場合でも能力パラメータを推定し,受験者の反応予測が可能な深層学習モデルを提案.モデルは受験者(one-hot vecter)とテスト項目(one-hot vecter)を入力とし,2値のテストを正答する(1)か誤答する(0)かの予測確率を出力する.
実際のテスト結果を用いて実験し,提案手法ではスパースなテストデータでも能力パラメータを柔軟に表現できることがわかった.


児童の議論に参加するロボットを開発.
小学生のディスカッションでは,議論の脱線や停滞が発生するため,進行役が知識提供したり場を仕切ったりする必要があるが,この役を議論支援ロボットが代行する.
議論支援ロボットには以下の機能がある.
・議論参加
(1) 発言の拡張
児童の発言の中のキーワードに反応して,ロボットが補足する.
(2) 質問応答
児童がロボットに質問すると,ロボットはオントロジーを用いて返答する.オントロジーは人手で作成したものとWikipediaオントロジーを検索するものを使用した.
(3) 議論の誘導
一定時間,キーワードを含む発言がなければ「みんなちょっといいかな」と行って補足説明を行う.また,「ヒントちょうだい」と言われたらヒントを言う.
・司会進行
(1) 進行管理
キーワードの発言状況によってフェーズを移行させる
(2) 発言の促進
一定時間発言がなければ,児童に「〜さん,どう思うかな?」と尋ねる.

実際の授業で観察では,ロボットは概ねうまく動作していることがわかった.
児童に対するアンケートでは,名前を呼ばれて嬉しかったとの声があった.
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