文脈処理

良峯徳和(多摩大)辞書情報を利用した間接的照応関係解析の試み

    自然言語:究極の知識表現
    SNePS:自然言語に近く、自然言語に翻訳可能、正確な論理計算が可能な中間的言語
    SNaLCへの期待
        自然言語理解に関わるさまざまな認知プロセスをシミュレーション
        日常言語コンピューティングの可能性
    課題
        日常言語は、多くの言葉が多義的で曖昧
        人は文脈を通じて、意味を絞り込む
    人間の常識的知識の代用として、辞書情報を使って間接的照応関係を導出
        → どのような困難・問題点があるかを明らかにする
    辞書:WordNetとWikitionary
    概念関係拡張規則:蓋然的関係に変換
    まとめ
        辞書定義を使って間接的照応関係を導出できた
        間接的照応関係の導出には、同一文書における結束性の確保という条件が重要な役割を果たす
    課題
        言語表現化されにくい常識的知識が膨大にあり、日常的推論の多くがその種の知識に依存
            → 図や画像に含まれる情報を言語化する手段の開発
    質疑
        他の例でも上手くいくか
        2つの辞書を併用した理由
            → wordnet:シソーラス、wikitionary:用語に強い

吉川正人(慶大/学振)、伊澤宜仁(慶大)超語彙パターンに基づく連辞型響鳴連鎖の自動発見手法の提案

    響鳴:話者を跨いだ類似発話の反復
        発話間の類似性を活性化させる営み
        質問ー応答のような慣習化された連鎖ではない
    響鳴の効能
        会話参与者の認知不可の軽減
        断片化、プランニング
    目的:会話コーパスから響鳴を自動発見する手法を提案ー言語分析の補助ツールとして
	発話から自動獲得された超語彙パターンを利用
	自動発見手法を会話コーパスに適用
    背景:対話統語論・・・記法:ダイアグラフ
	発話の連携の関係性から言語の構造を議論
	中心的な分析対象が響鳴
    連辞関係をとらえるためのツール
	構文解析は会話データには適用しにくい→より穏当な配列パターンを利用
    アルゴリズム
	共通の要素を抽出
	2つの発話の類似度を文節数とランク数から計算
	ランク数:共通の要素のうち最大の形態素数
    自動発見の手順
        隣接発話対→ターン交代対→韻律単位対(p.107)
    概要
	4211組みの韻律単位対を種徳
	言語分析の補助ツールであるから、再現率が重要
	検出漏れ:先行発話が長すぎるパターン(27例)
    質疑
	単位は文?
	    → 韻律単位:文より小さな単位
	文じゃなくて独立した節と捉えると拾える?
	    → 有効だと思う
	取れないパターンについて
	    → 隣接の発話をとるので、間に一言入っているものは拾えない
	響鳴の定義
	    → 質問ー応答のように慣習化された連鎖ではないもの

平尾卓也、松本和幸、北研二、任福継(徳島大)コーパスに基づく雑談を目的とした発話役割同定

    発話役割:話者視点での文の持つ機能
        今日は晴れです→事実
	何歳ですか→確認
    従来:タスク遂行対話(学内案内システム)→対話内容を限定→対話の流れを予測することが容易
    本研究:非タスク遂行対話→発話役割を考慮して対話の流れを予測
        円滑な対話のためには発話役割の同定が不可欠
    コーパスの構築
	web掲示板からテキストを収集
	複数人の発話を対象に
	1文ごとに人手で発話役割の付与を行う
	SWBD-DAMSL:発話の種類を記述したタグ
	    ↑ これをもとに、23種類の発話役割でタグ付け
    発話役割の同定
	入力文の形態素解析→分解
	入力文と発話コーパス内の全文との類似度を計算
	最も高い類似度を出した発話役割を、入力文の発話役割と同定
    質疑
	助詞を見るだけでは発話役割を決定できないのはなぜ?
	    → 感情などの発話役割もあるので、助詞助動詞だけではできない
	対話を扱っているのに、先行文脈を使わないのはなぜ?
	    → 前後に依存しない方法があれば、間違いによって間違いが続くことがない
	海外での研究との差分
	    → わからない
	今回扱った掲示板の内容は?
	    → 特にドメインを絞ってはいない

富永善視、島津明(JAIST)発話文の前提の推定

    対話:複数の主体による共同行為
        相互信念・共通基盤が必要
	これらの基盤化自体も対話によってなされる
    前提
	発話AはBが会話参与者の間でお互いに知られているときにのみAが適切であるといえる場合、
	そしてその場合に限り、命題Bを語用論的に前提とする。
	聞き手が発話を否定しない限り、聞き手はその前提を承知していると考えることができる。
    前提の特性
	否定時の不変性:前提を伴った文を否定にしても、前提は失われない
	前提トリガー:前提を喚起する表現
    前提の推定
	日本語文についての前提の研究は多くなく、日本語に対応させる
    前提トリガーの種類
	特定の単語がトリガーとなるもの
	特定の文構造がトリガーとなるもの
    単語型トリガーの前提
        トリガーが述語:叙述や動作の対象となる補足語・補足節の関する前提をとる
	トリガーが副詞:
    まとめ
	Levinsonが示した前提トリガーについて、日本語文法に則した分類を示した
    質疑
	前提と含意の違いは?
	    → 定義は難しい
	辞書を公開して
	    → 検討します

杉浦純、井之上直也、乾健太郎(東北大)説明生成に基づく談話構造解析の課題分析
井之上直也、乾健太郎(東北大)、Ekaterina Ovchinnikova、Jerry R. Hobbs(USC/ISI)大規模世界知識を用いた仮説推論による談話解析の課題と対策

横野光、稲邑哲也(NII)テキストからの物理モデル生成に向けて

    テキストに書かれた状況の理解
        特に物体の位置関係に着目
	その形式的なモデルの獲得を目指す
    モデルが獲得できると何が可能になるのか
	シミュレーションによる次の状況の予測
	予測された状況と実際に書かれている状況の比較
    「ロボットは東大に入れるか」国立情報学研究所「人工知能プロジェクト」
    物理モデル
	物体に関する状況の形式的表現
	    出現する物体
	    物体間の位置関係
	    物体の動作
    物体に関する情報
        どのような物体が出現するか
            全ての名詞が物体を表すわけではない
	    位置関係に関与する要素を物体として定義
        物体の性質
	    重さ、大きさ、におい、色・・・
	    性質は常に記述されているとは限らない
    必要とされる要素技術
	文のタイプの同定
	    設定を記述している文、問題の説明、動作
        事実性の判断
	    条件節中の記述は実際には起こっていない
	照応解析
	    ゼロ代名詞
	    相対名詞のノ格
	    イベントを指す場合
	述語項構造解析
    質疑
	図を見ないと解けない問題はどのぐらいあるのか?
	    → 頑張ったら図を見ずに解ける問題が3分の2
        図から文字化することは?
	    → 今回は図に頼らないアプローチ
Comments